プロジェクトレポート

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ロボットテクノロジーとヘルスケア分野を統合して
さらに広く、大きなフィールドへ。

● ロボットラボラトリーのこれまでとこれから

ロボットラボラトリーの活動は、ロボットテクノロジーを活用した起業や新規事業創出により、大阪に新たな産業を根付かせることが目的である。活動開始から約8年にわたってロボット技術を活用した様々な製品、サービスの開発を支援し、企業・研究機関ネットワークが構築され、ビジネスプロデュース、実証実験などのノウハウを蓄積してきた。その知的資産をベース活用し、社会課題解決型のビジネス創出に取り組むため、健康・予防医療分野の産業振興チームと統合して、新たに出発する。

事業立上げ当初は、技術をもつ企業、研究者のネットワークづくりからスタートし、その技術をインテグレートして、新たな製品へと導くプロデューサーの育成など「造る」事に重きを置いた事業展開をしてきた。そして近年は、「造る」に加え「使う」といフェイズを重視し、ロボットテクノロジーの活用分野を模索しており、テクノロジーを社会の課題を解決し消費者のニーズを満たす有効な「手段」であると位置づけ、「使い手」を巻き込んだ事業展開にシフトしている。

また、今回統合する「健康・予防医療プロジェクトチーム」では、これまで機能性食品や健康関連機器、サービスの開発、科学的根拠取得の支援を行ってきた。近年では、「抗疲労・癒し」を切り口とした新規事業開発サポートを行なっており、こちらもヘルスケア分野の知見、経験を持つ企業や研究機関とのネットワークをはじめ、様々なノウハウが蓄積されている。

● 「医療・健康」という新たなフィールドへ

日本はこれから誰も経験したことのない超高齢社会に入っていく。そのような中でとりわけ健康・医療分野でのニーズは高く、市場はこれからも伸び続けていくだろう。

健康分野では、幅広い世代の消費者を対象とした、健康維持や体力向上、疲労回復や癒しにつながる製品サービス開発、高齢者の健やかな暮らしをサポートする福祉関連機器・サービス開発をサポートし、医療分野では、医療・介護・看護の現場で医師や看護師、介護者などの負担軽減や作業の効率化など課題解決やニーズを満たすための機器やサービスづくりのため、医療機関や介護施設と企業との連携から事業化をサポートしていく。

また、これまで取り組んできたビジネスイノベーションプラットフォームの機能の強化として、ビジネス人材育成、企業ネットワーク事務局、実証実験サポート、製品・サービスの科学的根拠取得支援と評価方法の開発支援などにも取り組んでく。

新しいテクノロジーや製品・サービスが生活を豊かにすることができれば、ビジネスは自然に大きくひろがり、いずれは産業の振興へとつながっていく――ライフイノベーションからはじまる経済波及の典型的なスタイルだ。

そのためにも社会課題には正面切って取り組まなければならない。

課題を解決するビジネスを、たった一社で考えて結論づけるよりも、企業・ユーザー・研究者・行政がそれぞれの視点で意見を出し合ってビジネスとしての価値を高めていくほうが成功する確率は高まる。視点の数、ネットワークの数、技術の数が、かけ算でシナジー効果を生み出していくだろう。新たにスタートする事業のフィールドはまさにそこにある。様々な立場の人や組織の接点となり、製品・サービスを実際に収益を生み出す「ビジネス」として成り立たせるため、これまで以上に幅広い企業との協業や様々なフェイズでのサポートを行っていく。

夢や理想をみんなで現実へと換えるチカラ
ロボットビジネス起業塾/人材育成講座EPEER 修了生交流会

2012年3月17日、年度末も押し迫った土曜日。ほとんどの企業が休日にもかかわらず、ロボットラボラトリーにはロボットビジネス起業塾/人材育成講座EPEERの修了生が集まっていた。それぞれ、RT(ロボットテクノロジー)を活用した新規ビジネスを展開するため、起業や社内での新規事業立上げをめざし、現在の状況報告や意見交換を行っていた。
参加者の中から数名を紹介する。

人材育成講座EPEERは(株)国際電気通信基礎技術研究所(ATR)が主体となり、奈良先端科学技術大学院大学、大阪大学、ロボットラボラトリーと連携し開発した、次世代ロボット分野の中心的リーダーとなるイノベーティブな人材を育成するための教育プログラム。ロボットビジネス起業塾はその前身である。
これまで7年間講座を実施し、修了生は約180名。17件の起業、新規事業を生み出してきた。

● 株式会社ロボリューション

代表取締役 小西 康晴氏代表取締役 小西 康晴氏

課題解決のために新たな策を講じたいユーザーは多数。ロボット技術を使って課題解決をめざすメーカーも多数。でもなぜかロボットの需要は今ひとつ伸び悩んでいる――なぜなのだろうか。
ユーザーはメーカーを、メーカーはユーザーをよく知らない。それなら、両者の架け橋になり求められるロボットを企画し、ディレクションして造り上げる会社をつくればよいのではないか。
電子デバイスの研究開発・生産・販売を行う村田製作所の技術者だった小西氏が抱いた思いは消えることはなく、起業の礎となった。
独立したあとも村田製作所の外部開発メンバーとしてムラタセイコちゃん®の開発に携わり、それ以外にも大和ハウスの住宅床下点検ロボット、ピップ株式会社の高齢者向けセラピーロボット「うなずきかぼちゃん」と数々のロボット開発に携わってきた。住宅床下点検ロボットは50体、うなずきかぼちゃんの出荷数はすでに4桁に到達し、ムラタセイコちゃん®は複数体が日本のみならず世界中の展示会や科学博物館などで活躍している。
彼の事業のバックボーンをひとことで表せば「実用化」という言葉に凝縮される。「世の中で使えるロボットの実用化に寄与している」と実感することが活動の原動力となっている。小西氏のビジネスで企業とのネットワークは不可欠である。講座の修了生やRooBO会員が彼の強力なビジネスリソースとなっている。

● 株式会社アールテクス

代表取締役社長 積山 彰氏代表取締役社長 積山 彰氏

アールテクスの事業内容は大きく分けて3つある。ひとつはロボットハンドや教育用ロボットなどデベロプメントロボット(自社製品)、2つめは大学などにロボットパーツや筐体の提供を行う事業、そして3つめは企業の外部開発担当としての事業だ。
主力製品は、手指リハビリロボットで、ティーチングプレイバック方式を採用している。正しいリハビリの動きを記憶し、ロボットがそれと同じ動きを再現することでひとりでも正しいリハビリをできるようにするというものだ。
積山氏がこのロボットを着想したのは、実際に身内がリハビリで苦労している姿を目の当たりにして必要性を感じたためと、今の社会的背景によるものだ。高齢化が進み、リハビリの需要はますます伸びてくるが、病院で理学療法士によるリハビリ指導をうけても自宅で患者自身がひとりで正しいリハビリをするのは難しく、また、誰の助けもなく続けるのは精神的にも負担が大きい。だんだんとリハビリから遠ざかり、回復が遅れたり回復できなくなってしまう――このままでは、いけない。と感じたという。
積山氏が開発した手指リハビリロボットは、現在、デンマークで医療認証を取得中だ。デンマーク政府での活動をはじめとするグローバルな取り組みは、テレビでも取り上げられて注目を集めた。技術開発だけではなく、このロボットを導入すれば病院経営と過酷な現場をどのように改善できるのかまで踏み込んでこそビジネスと語る氏は、もし講座を受講せずに起業していたら、失敗するベクトルに進んでいたかもしれないと振り返る。

● 株式会社ヘルプズ・アンド・カンパニー

代表取締役 西村 栄一氏代表取締役 西村 栄一氏

西村氏の業務内容は、「介護運営コンサルティング・セミナー事業」という講座の内容とは一見真反対にある事業形態だ。介護事業者を対象に現場作業や経営そのものの効率化、人材の育成などの情報提供やコンサルティングを行っている。
「介護の現場は、福祉と営利の間を渡る特殊な世界。介護職員が行うことを、単純に『ニーズがあるに違いない』と思いこみで自動化すればいいというわけではありません。棲み分けを現場レベルで熟知していないと自動化はうまくいきません。効率化をすべきところと人手に任せるところの判断が重要です。」たしかに少し話を聞いただけでも現場レベルのニーズがザクザク出てくる。そんな西村氏に、受講してどうでしたかと聞くと、間髪を入れずに「よかった!」と返ってくる。「この講座は、現場主義で肌感覚重視の渡世型人間と研究所でロボットを開発されているような先端技術で改革肌人間とのコラボレーションができるところがいいですね。ここでしか得られないものが確かにある。」と西村氏は実感している。

● マッスル株式会社

開発第5グループ 玉井 智氏開発第5グループ 玉井 智氏

さいごに、経営者以外の修了生を紹介する。交流会の中で活発に会話しているマッスル株式会社 玉井氏に講座や今回のような交流会の良さを聞いてみた。
「ここでビジネスを展開している人は、裸一貫でRTを活用した事業をはじめ、売り上げや経営全体を考えなければなりません。そんな話を聞けるのがとっても刺激的に感じます。」と玉井氏は語る。確かに、ロボットビジネスと経営の「生の声」を様々な人から聞くことができる場は他にはなかなか見当たらない。理想と現実の狭間の中で苦労しながらも歩みを進める人たちが、すぐ隣にいる。たとえば、新しい製品の開発などを行うときにそのような人たちの姿勢から学ぶことは大いにあるし、開発製品が市場でどのように受け入れられるのかなども参考になるだろう。「私は会社の一員ですが、独立されている方は視点が違います。企業に属している自分が、売れる物とはどういうものなのか、採算性や流通量はどうなるか、ということを考えるようになったのはこの講座の影響を受けているからだと思います。」という玉井氏の言葉からもわかるように製品開発と流通市場のボーダーラインを少なくして、「売れる」ビジネスのフォーマットづくりにこの講座は有効な手段となっている。

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新規事業のための先端テクノロジー活用講座
2012年 6月13日、20日、27日、7月4日、11日、18日、25日
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グローバルな市場で、他社との競争に勝ち抜く製品、事業を築くために必要な先端技術(ロボットテクノロジー)を選定し、世界をリードする講師陣が技術解説を行います。また、期間中、「新製品 新規事業開発の進め方」と題した特別講義を実施。技術、マネジメントの両面をカバーし、新規事業が創出できる人材をめざします。

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ARプラットフォームARAPPLI(アラプリ)と
AR技術の活用でひろがるビジネスモデル
アララ株式会社

アララ株式会社取締役 石古暢良

AR技術もここ最近ようやく認識がひろがってきた感があるが、アララ株式会社のAR技術活用方法はすでにビッグビジネスを生み出している。ではそのビジネスモデルとは一体どのようなものなのか。アララ株式会社取締役 石古暢良(いしこ・まさよし)氏に詳細を聞いてみた。

ビジネスモデルを紹介する前にアララ株式会社について簡単に説明しよう。アララ株式会社はギフトカードサービス・リチャージカードサービスのソリューションなどを提供する株式会社レピカの100%子会社である。その他にグループを構成する企業としてロボティクス、IRT、ARを活用する株式会社ジャイロウォーク、優秀なCGクリエーターを輩出する学校デジタルハリウッドのスーパークリエイターのネットワークで設立されたDHE株式会社があり、AR技術の第一人者である奈良県先端科学技術大学院大学 加藤 博一教授が技術顧問をしている。

● 3つのタイプのビジネスモデルと
スマートフォン向けARプラットフォームサービスARAPPLI(アラプリ)

アララ株式会社が提供するARを活用したビジネスモデルは大きく以下の3つのタイプに分けられる。

・広告プロモーションとしてのAR活用
・IPad営業支援ツールとしてのAR活用
・図鑑や教育セットとしてのAR活用

また、アララのビジネスモデルを語る上で、無償ダウンロードできるARAPPLI(アラプリ)の解説が欠かせない。使い方はごく簡単で、携帯電話でARAPPLIをダウンロードして起動させ、四角い枠で囲まれたARマーカーにかざすだけだ。それだけで今見えている風景の上に3DCGによるコンテンツが出現する。よくあるスマホアプリと異なる点は、ARAPPLIはコンテンツをサーバー上に置き、通信でコンテンツを再生する点にある。サーバーにコンテンツを見にいくため、再生キャリアはiPhoneでもAndroid系端末でもOKだ。

● 広告プロモーションとしてのAR活用

では、アララが展開しているビジネスモデルを解説していこう。
まずは広告プロモーションとしてのビジネスモデルの実例だ。
エールフランス社のプロモーションでは、ポスターにARマーカーを印刷し、それをARAPPLIで起動して見ると、轟音と共にエアバスが3DCG画像で飛んでくるコンテンツを見ることができる。エアバスはある程度大きくなったところで止まり、その向こうに映る現実世界の人物と一緒に写真を撮ることができる。写真はアプリ搭載された撮影機能によりボタンをひとつ押すだけで撮影でき、そのままTwitterやFacebookにアップすることもできるため、コミュニティを通じてさらに広告効果がひろがっていく。また、3Dコンテンツを再生する画面下部にバナーが出現し、そこをタップすればエールフランスのサイトへとつながっていく。ワンタップでクライアントサイトへリンクできるようになっていて、そのサイトでの商品販売などにつなげるという手法だ。
実際、このAR広告プロモーションでエイベックスのあるアーティストのコンサートグッズ販売は8%の伸びが見られたそうだ。この効果は大きい。

< アユパンARの楽しみ方 >

もうひとつ、クライアント企業にとっての魅力はコンテンツのコストと開発期間の短縮ができるところにある。ARAPPLI はASPサーバー型なのでひとつのコンテンツに対してひとつのアプリを制作する必要がない。クライアントはアプリ制作を行う必要がなくコンテンツ制作のみでプロモーションが可能だ。これはコスト、開発期間のどちらも圧縮できる。また、アララではグループ企業に3DCG制作会社のDHE があるため、依頼をワンストップで受けることができ、素材などのデータがあれば、最短1日でサービスの提供が可能なのだ。

● 営業支援ツールとしてのAR活用

たとえばマンションなど建築工法の解説の場合、タブレット端末を壁にかざして中の免震構造を映し出し、地震発生時の動きを動画で見せることができる。また、フランチャイズチェーン店で同一商品を販売する場合、説明員の営業力の差によって売り上げにバラツキが生じたりする場合も多い。そのようなときにこの営業支援ツールを使用すれば説明の質の差を少なくすることができるだろう。
その他にも、コピー機販売のセールスパーソンが、客先でマーカーを床に置き、タブレット端末をかざせば、実物大の機器が現れ設置のイメージをわかりやすく見せることができたり、住宅展示場では、納戸に収納された家具や荷物をもし部屋の中においたらどれだけのスペースを使ってしまうかのイメージを見せたりすることもできる。このように様々な業種において、営業支援ツールとして採用されている。

● 図鑑や教育セットとしてのAR活用

平面的な図鑑ではわかりにくい図や絵を、AR技術とタブレット端末などに内臓されたジャイロセンサを活用して、わかりやすく魅力的に見せることができる。たとえば昆虫図鑑ならタブレットを回すことでカブトムシを様々な角度から見ることができる。ASPサーバー型ARコンテンツの良いところは、図鑑なら、その膨大なデータをサーバーに置いておけることと、通信を通じてWEBサイトへ接続し、より詳しい情報を得ることができるところにある。

● ASPサーバー型だからできる新しいサービス

アララが最近開発したのが、ARを活用したオリジナルコンテンツをグリーティングカード(挨拶状)として使用するサービスだ。

送る側は、マーカーをARAPPLIで読み込み、案内に沿って動画を撮影後、アップロードするだけで完成する。動画を流す3DCGのフレームはあらかじめ用意されたものから選ぶことができる。
ARが完成した後、受け取る側は送られてきたARグリーティングカードに印刷されているマーカーをARAPPLIで読み込むことで楽しいメッセージムービーを見ることができる。
メッセージをアップロードしなおせば、グリーティングカードを送られた人は新たに違うコンテンツを楽しむことができる。

< みんなのARグリーティングカード >

グリーティングカードは、日本ではまだ習慣化するまでにいたっていないが、北米やヨーロッパではすでに生活の一部となっている。もし、このグリーティング手法がそれぞれの国で受け入れられたならば爆発的な普及となるだろう。

ARはただめずらしい技術ではなく、すでに最先端のビジネスモデルとして実績を上げ、注目されているのである。

企業情報 : アララ株式会社

発電する床材「イーテリア®フロア」からはじまる
新エネルギーの地産地消ムーブメント
東リ株式会社

※イーテリア®は東リ株式会社の登録商標です。

西川氏、大畑氏

人が何かを踏むことで電気が生まれる。――以前にそんな記事を見聞きした方も多いと思う。今回は、発電する床材「イーテリア®フロア」を開発している東リ株式会社を訪問。開発を担当する総合開発部 西川部長とフロア企画部 新分野推進グループ 大畑氏にデモンストレーションとインタビューをお願いした。

● 「イーテリア®フロア」を利用した電気利用方法のデモンストレーション

まずは「イーテリア®フロア」とはどのように使われるものなのかを、東リ株式会社にご用意いただいたデモンストレーションを通じて見てみよう。

  • 発電を光に変える利用方法
    発電を光に変える利用方法 正方形のタイルカーペットから赤黒2本の細い線が出ている。2本の線は、LEDランプがロープ状につながったイルミネーションパーツにつながっている。この状態で「イーテリア®フロア」を踏むと、踏んだ瞬間にチカッとすべてのLEDランプが一瞬灯る。「イーテリア®フロア」の上で足踏みをすればそのタイミングに合わせてLEDランプが点滅を繰り返す。
  • 発電を音に変える利用方法
    発電を音に変える利用方法 同様にタイルカーペットより伸びた2本の線が、今度は白いボックスに接続され、そのボックスの上にはコップのような形状のものが乗っている。これは音を発するしくみであり、タイルカーペットを踏むと・・・電子音のメロディが流れ出した!
    少ししか踏まないとメロディは途中で止まってしまうが、ある程度踏み続けると何小節ものメロディがよどみなく流れてくるようになる。このデモの場合、踏むタイミングはメロディのスピードなどには影響しない。白いボックスの中には制御ユニットが組み込まれ、発電された電気であらかじめメモリに記録された通りにメロディが再生される。
  • 発電を無線信号として使用する方法
    発電を無線信号として使用する方法 また同様に、正方形のタイルカーペットが置かれているが、今度はタイルカーペットからの線は出ていない。このタイルカーペットを踏むと・・・離れた場所にあるPCの画面が切り替わる!踏むたびに画面がスライドして別の画面に切り替わる。このデモンストレーションのしくみは、カーペット内にあらかじめ発信器を内臓しておき、床発電にて生じた電気を使って信号を発信しているのである。信号を受けて画面が切り替わる動作は受け手側のコンピュータで制御されている。つまり、信号入力があるたびにどのような動作でも受け手側でつくることができるということになる。

● 「イーテリア®フロア」で生じたエネルギーをどのように使うかがポイント

この発電方法によるエネルギーは、発電量が小さいためまだ代替エネルギーとして使用することはできない。しかし、踏むことによって電機が発生し、その場で使うというのは「省エネ」とは違ったいろいろな活用法が見考えられる。「イーテリア®フロア」は、用途開発が最大のポイントになる。
たとえば、前述の床発電を光に変えるデモの場合、床発電の上でダンスをすれば、ダンスのステップに合わせたタイミングで床や別のイルミネーションが光るといった楽しさを生み出すこともできるだろう。音を使うデモでは、立ち入られたくないエリアに侵入があった場合、予備電力なしに警告音を発することもできるし、侵入者にとって自分が動くタイミングで何かが鳴るというのも抑止力になるだろう。単純に目の不自由な人への案内に使うのもいい。
セキュリティでの活用であれば信号を発生する床スイッチとして使用し、どこかの床を踏めば、侵入者の録画が始まるといった使い方もできるだろう。発電量は少ないが、「踏むタイミング」と「エネルギーの地産地消」をキーワードそして考えればまだまだいろいろな活用方法があるにちがいない。

● 微妙な床を踏む「加減」と小電力デバイスの発達が普及のポイント

発電のしくみについて詳しい説明は省くが、大まかには圧電素子といわれるセラミック素材の板状デバイスに、力を加えることで発生する歪みを電力に変えている。デバイスの構成がセラミックであり、「踏む」ことで発電するため、床に内臓する方法はたいへん微妙でむずかしものとなる。発電素子を保護しすぎると、発電に必要な歪み自体が生じないので発電が極端に弱くなったり、発電しなったりする。逆に保護を甘くすれば耐久性の面で問題が生じる。この部分の微妙なコントロールが床発電の最重要部分であり、長年、建築建材の分野で床材の製造や評価技術を追求し続けてきた東リの得意分野でもある。
小電力によって動作するデバイスの発達も床発電の普及に大きな影響を与えている。LEDやマイコンチップなど、小さな電力で動作するデバイスと組み合わせることで床発電の有用性が生まれる。
「省エネ」とう代替エネルギーとして使うのではなく、今までになかったところから生まれる「新エネ」を何に使うのか――イルミネーションなどの装飾や表示、電子音による注意喚起や警告など色々な分野でその取り組みが始まっている。わずかだが、必ず生まれるエネルギー。それを何に使うのかを問われているのは、私たち社会のほうかもしれない。

企業情報 : 東リ株式会社

実際に病院で稼働している自律搬送ロボットHOSPI(ホスピー)
現場のリアルな声と、そのコスト/メリットをレポート
パナソニック健康保険組合 松下記念病院

● HOSPI導入前の状況と現場スタッフからの要望

HOSPIへの薬剤投入

松下記念病院の地下1階にある薬剤部。ここでは、7病棟359床の入院患者や日々の外来患者の調剤を行っている。この薬剤部と続いたエリアにHOSPIステーションがあり、薬剤搬送用2台、検体搬送用2台の合計4台が稼動している。薬剤部調剤担当課長の大友氏に、導入の前後でどのように業務がかわったのかを聞いてみた。
HOSPIが導入されるまでは、バーチカルコンベアという設備により薬品が運ばれていた。バーチカルコンベアは、建物内部を通り薬品を運ぶコンベアである。このシステムは導入されてからかなりの年月が経っていることもあり、毎日のように搬送が止まるなどのトラブルがあったという。トラブルがあっても患者さんの容態変化は待ってくれない。その場合は看護師が病棟と薬剤部の間を往復して薬品を運ぶことになる。薬剤部は地下1階にあり、病棟は3階〜6階まである。仮にいちばん薬剤部から遠い6階病棟で患者の容態が急変し、投薬が必要な場合に看護師がその間を往復すると6〜7分前後の時間が必要になる。また、看護師が薬品を搬送すれば、急変した患者から離れなくてはならなくなり、本来行えるはずの処置が行えなくなる。特に夜間の臨時搬送は人手も少なくなるため、搬送が重なれば影響も大きいものとなる。
ここで記述している状況は特別な状況ではない。松下記念病院は359床に加え、救急外来の受け入れも行っており、薬品の臨時搬送は毎日かなりの回数必要なのだ。
このような状況下で、ロボットでの薬品の搬送に許される時間は5分である。人間と活動範囲を共有しながら5分台で地下1階から6階建ての病院内の指定の場所に移動できるロボットは、その時点でまず存在しなかっただろう。HOSPIはこの課題をあらゆる点を効率化することで達成し、現在は4分台での移動を目標に改良が加えられているという。では、どのようにして達成しているのだろうか。

● あらゆる時間節約を積み上げて総合的に搬送時間を短縮

HOSPI受け取り時の解錠

HOSPIステーションは薬剤部に続くエリアにある。その理由は、電子カルテにより搬送指示された薬品リストデータを、薬剤部にある注射薬払い出しロボットシステムが受け取り、すぐにHOSPIへ搭載するためだ。この方法だと看護師が受け取りに来るための往路分の時間をまるまる短縮することができる。
また、ステーション内のHOSPIは常に背中を前に向けた状態で、フェイスも背中側を向いている。背面の庫内に薬品を投入し、行き先指定が直ぐに行えるようにするためだ。
薬品を受け取ったHOSPIは搬送途中の通路で無線信号によりあらかじめエレベータを呼んでおくことで時間を短縮している。


HOSPIの到着をお知らせするグリーンランプ

エレベータを下りたあとは、スタッフステーション(ナースステーション)前まで移動するだけだ。HOSPIがスタッフステーション前に到着すれば、スタッフステーション内のグリーンランプが点滅して到着を知らせる。
電子カルテ活用による往路分の時間短縮、待機デフォルト姿勢、無線でエレベータを呼ぶ最適化など、HOSPIの搬送時間を短縮するための工夫が随所にある。HOSPIに加えて注射薬払い出しロボットシステムを使用することで、さらに業務は効率化され、総合的な搬送時間の短縮を実現しているのである。

● 人と共存するHOSPI

女性キャラクターのHOSPI

HOSPIは人と活動エリアを共有している。人が通る廊下をHOSPIも通るし、エレベータも人と共通のものを使う。通路には、人だけではなく色々な器具や備品も行き来する。そのような場所での安全性はどのように確保されているのだろうか。
HOSPIには上層部縦走レーザスキャンセンサが3箇所、下部水平レーザスキャンセンサが1箇所、そしてバンパーセンサが取り付けられ、すべてのセンサが作動していなければ停止するしくみになっている。人に避けてもらうのではなく、人や備品類などを検知すると自らが回避行動を行うように設計されている。移動速度も危険や不安を全く感じない程度で、仮に高齢者やゆっくりとしか動けない人が前方にいる場合は、まず停止して「すみません」と声をかけながら回避して進む。人が避けてくれた場合には「ありがとうございます」とお礼も言う。
実際、HOSPIが移動しているときは、人も少し距離をおいて見ていることが多い。HOSPIの顔はにこやかな表情と共に薬品を搬送している旨のメッセージが記載されている。人々の反応を見ていれば、顔の役割が大きいことがわかる。もし、顔のない物体が無言で近づいてくれば誰もが驚異を感じるに違いない。ここで使用されているHOSPIの顔は個体識別の意味もあり、グリーン・ピンク・オレンジ・イエローの4種類別々の色が使われていて、フェイスも男性/女性キャラクターの2種類がある。にこやかな表情は、小児科で大人気だ。

エレベータ

ロボットは業界のガイドラインにより、人と一緒にエレベータには乗れないと定められている。エレベータも人と共有だが、HOSPIが使用するときにはロボット搬送に使用する旨のメッセージがエレベータ前のサイネージに表示され、エレベータがロボット搬送モードに切り替わる。エレベータ入り口上部にある階層を示すランプが消え、今エレベータがどこにいるのかが解らなくなり、エレベータが到着して扉が開いても籠内の照明は消されている。人は照明の付いていない閉じた空間に入ろうとはしないという心理がうまく使われている。
このようにして、人の気持ちも汲み取りながら、HOSPIは人と共存し、安心・安全を確保しているのである。もちろん導入後、事故は全くない。

● 松下記念病院 院長が語る経営面でのメリット

山根院長

パナソニックが開発時にめざした「お客様に利益を提供できるロボット」というコンセプトは達成されたのだろうか。その部分を含めて、松下記念病院 山根院長に少し踏み込んだ話を聞かせていただいた。

  • まずはずばり、HOSPI導入の経営的なメリットについてお聞かせ下さい
    ――当病院では、以前からバーチカルコンベアという搬送システムを使用していたのですが、老朽化が進み、搬送物が途中で詰まってしまうなどのトラブルも多くなってきました。このシステムを新しく入れ替えた場合は約1億円の経費がかかり、その年間維持コストは1000万円以上必要になります。一旦は、設備の改修はせず、夜間の搬送専門スタッフを置き運んでもらうことにしましたが、ベストな方法ではありませんでした。
    その後、HOSPIの提案があり、バーチカルコンベアの高額な初期設備投資と年間維持コストのことを考えると、このシステムが実現すれば非常に有益だと考え、現場で実用しながら作り上げていくことにしました。――
  • もし事故が起こったら・・・、不安はありませんでしたか
    ――もちろん、安全性を確保してもらうのは最低限の条件です。
    人やものを回避するためのしくみに加えて、何かあればすぐに停止。この基本的な考え方を聞き、実際にHOSPIの動き(すぐに停止する様子)を見て、これなら安全性は保てると思いました。
  • 導入するとき、スタッフの皆さんの反応はどうでしたか
    ――多くのスタッフから「走ったほうが早いんじゃない?」という声があがりました。
    でも実際に計測してみると、HOSPIの方が速かったんです。搬送動作はHOSPIシステムの一部であり、電子カルテとの連動で総合的に速くなることや、夜間緊急時に人に代わって搬送してくれるなどのメリットがわかってくると、逆にスタッフのほうからいろいろな注文が出てくるようになりました。スタッフの印象は、今では「意外と早い」になっていると思います。現在、5分台の搬送時間ですが、5分を切ってくれるようにパナソニックさんにはお願いしているところです。
  • 導入して搬送以外のメリットもありましたか
    HOSPI行動軌跡モニター ――見ていただいてわかるように、子どもさんがたいへん喜んでくれています。また、お見舞いに来た方が写真を撮られたりもしています。院内が楽しい雰囲気になりますね。ある時、お母さんが目を離されたときに、小さなお子さんがHOSPIについて行ってしまったことがあるのですが、HOSPIに搭載されているカメラ画像で4台あるうちのどのHOSPIかを特定し、位置情報からどこにいるかを確認してすぐに見つかったという話もあります。あと、これは少し余談になりますが、夜間に女性の薬剤師さんが仮眠をとっているときに緊急で薬品搬送の依頼があった場合、人が取りに来るのであれば髪や服装を整えたりしなければいけないのですが、HOSPIなら、薬品を入れて「行っといで!」ですみますね。ちょっと笑い話的なことですが、ほんの少しの時間も短縮できています!
  • 薬品搬送以外の用途はありますか
    薬剤部に続くエリア 今、当病院では4台のHOSPIが稼動しており、2台が薬剤をもう2台が検体の搬送を行っています。薬剤部に常時待機しているのは3台で、残る1台は小児科病棟に配置されています。
    カメラが付いているので、夜間巡回で使用できないかとか、リネン・廃棄物・放射線源など人が直接さわるときに注意が必要なものの搬送にも役立つのではないかとか、スタッフから様々な要望や提案も寄せられています。今後、タイムパフォーマンスとのかねあいで実用化するかどうかを決めれば良いと思います。
  • 最後にHOSPIについて総合的にどう判断されていますか
    近年、様々な場所でロボットを見かけるようになりました。そのほとんどは宣伝的な意味での存在だったり、余り活用されていなかったりと宝の持ち腐れだと思います。しかし、ここでのHOSPIはすでに職員のひとりとしてがんばってもらっています。スタッフのみんなも「HOSPIにたのもう」とか「HOSPIに来てもらって」とか日常のなかでまるで同僚のよう。当病院を見学に来られる他の病院経営者の方も、有用性についてたいへん興味を持って帰られます。それほど使えるロボットだということですね。

今後ますます加速する少子高齢化にともない、自動化、効率化は避けては通れない課題であるが、作り手と使い手の溝を埋めるにはもう少し時間がかかりそうと言うのがよく聞かれる声だ。
パナソニック(株)、松下記念病院では、もはやロボットシステムを作り上げているというだけではなく、作り手と使い手がチームとなり、ロボットと病院のスタッフ、患者さんが共存する、「今後あるべき社会」が構築されつつあるのではないだろうか。

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(C)2012 ROBOT LABORATORY